Jun 25, 2013

VALUES, 2013 Summer

ダイナースの会報誌「VALUES」で、ミラノサローネに出展したエルメスについて文章を書いた。今年、一連の新作家具をデザインしたのはフィリップ・ニグロ。それらの家具は、19世紀までフランスで使われていた、大切なものを収める工芸品の箱、ネセセールの要素がさり気なく生かされている。

ここ数年のエルメスはホームコレクションに力を入れていて、ジャン・ミシェル・フランクの復刻家具をパリで発表した後、翌年からミラノサローネに本格参入した。1年目はミラノの大御所であるエンツォ・マーリとアントニオ・チッテリオによる新作家具を発表、昨年は(東日本大震災をふまえてか)坂茂を起用した「module H」を発表、そして今年はミラノの巨匠ミケーレ・デ・ルッキに師事したフランス人のニグロを抜擢した。サローネという場の文脈の読み方が実に丁寧で巧み。結果、新作も展示手法も多くのメディアで絶賛されていた。

なお、この号ではフオリサローネについての記事を伊東史子さんが担当されていて、その構成と文章がすばらしい。他の都市のデザインイベントや見本市とは異なり、「ミラノには大人の対話がある」という話など。ジェームス・アーヴィンを哀悼し、その人となりを紹介する一節も。

写真は今年のエルメスの展示の会場になったチルコロ・フィロロジコで。